膵がんスクリーニング最新技術
1. 十二指腸液を使った世界初の検査法(九州大学)
胃カメラ検査中に十二指腸液を採取し、膵がん特有のタンパク質(S100P)を分析することで、膵がんの早期発見が可能に。
感度82.4%、特異度77.6%、陰性的中率90.8%と高精度。
健康診断や人間ドックのオプション検査として導入予定(2025年春以降)。
2. 膵液中の遺伝子変異を検出する方法(大阪大学)
特殊な胃カメラで膵液を採取し、がん細胞の遺伝子変異を検出。
早期膵がん患者を81%の精度で判定、健康な人は100%の精度。
検査時間は胃カメラに追加で1〜2分、体への負担も少ない。
主な体細胞性遺伝子変異(膵がん細胞でよく見られる)
遺伝子名 | 変異の特徴 | 機能・影響 |
---|---|---|
KRAS | 約90%の膵がんで変異(特にG12D, G12V, G12R) | 細胞増殖シグナルを活性化し、がん化を促進 |
TP53 | 約70%で変異 | DNA損傷応答を担うがん抑制遺伝子。変異で細胞死が起こらず、がん進行 |
SMAD4 | 約40%で変異または欠失 | TGF-β経路に関与し、転移や浸潤に影響 |
CDKN2A | 多くの膵がんで欠失や変異 | 細胞周期を制御するp16をコード。変異で細胞老化が起こらず腫瘍化 |
家族性膵がんに関連する生殖細胞系列変異
遺伝子名 | 備考 |
---|---|
BRCA1 / BRCA2 | 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)にも関与。PARP阻害剤が有効な場合あり |
PALB2, ATM, CHEK2 | DNA修復に関与。家族性膵がんのリスク因子として注目 |
その他の注目遺伝子(変異頻度は低いが重要)
ARID1A, KMT2C, RNF43, TGFBR2 なども膵がんで変異が報告されており、個別化医療の研究対象になっています。
膵がんは遺伝子変異だけでなく、エピジェネティックな変化(脱分化など)もがん化に関与していることが最近の研究で示されています。つまり、遺伝子のスイッチが異常に切り替わることで、正常な膵細胞ががん細胞へと変化する可能性があるのです。
こうした知見は、早期診断や分子標的治療の開発にもつながっており、今後の膵がん医療に大きな影響を与えると期待されています。