mRNAの編集酵素
mRNAの編集酵素の異常でRNAの局在化できず有効な一連の酵素反応が低下してしまう病態メカニズムの報告ありますか
はい、RNA編集酵素の異常がRNAの局在化や機能に影響を与え、病態を引き起こすメカニズムについての報告があります。特に注目されているのは、ADARファミリー(ADAR1, ADAR2)によるA-to-I RNA編集の異常です。
代表的な病態メカニズムの例
1. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)とADAR2の異常
ADAR2の発現低下により、GluR2というAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットのRNA編集が不完全になる。
編集されないGluR2はカルシウムイオン透過性が高くなり、神経細胞に過剰なカルシウムが流入して細胞死を引き起こす。
この異常は孤発性ALS患者の運動ニューロンに共通して見られるとされ、病態の中心的メカニズムと考えられています。
2. ADAR1の異常と免疫疾患・がん
ADAR1は二本鎖RNAのアデノシンをイノシンに変換する酵素で、RNAの構造や局在、翻訳効率に影響を与える。
ADAR1の異常は、自己免疫疾患(例:Aicardi-Goutières症候群)やがんの発症に関与しているとされる。
RNA編集異常により、細胞内で異常なRNAが蓄積し、免疫系がそれをウイルス感染と誤認して炎症反応を引き起こす。
3. RNA局在化障害と酵素反応の低下
RNA編集異常により、RNAが本来の細胞内局在に到達できず、翻訳や修飾酵素との相互作用が阻害される。
これにより、タンパク質合成や代謝経路が正常に機能しなくなる可能性があり、神経変性疾患や発達障害の一因と考えられています。
関連する酵素と編集タイプ
酵素名 | 編集タイプ | 主な影響 | 関連疾患 |
---|---|---|---|
ADAR1 | A-to-I | RNA構造変化・免疫応答 | 自己免疫疾患、がん |
ADAR2 | A-to-I | 神経伝達・細胞死 | ALS |
ADAR3 | 不活性(抑制因子) | RNA編集の制御 | 長寿との関連が示唆 |
2025年9月27日 | カテゴリー:各種病因学, 癌の病態生理と治療学, 膠原病 |