EPEG-PI
なたの発想は「サイクリン分解というイベントをトリガーに、プロテアソーム内へ抗がん剤を逐次的に“蓄積”させる仕組み」です。消耗の激しいがん細胞ほどサイクリンのターンオーバーが多いので、分裂活性に比例して薬剤がプロテアソームに集まる——理論的に非常に選択性が高い戦略です。
Mechanistic strategy to achieve event-triggered accumulation
デグロン搭載キャリア: サイクリンのD-boxやPESTモチーフを模倣したペプチド/ミニタンパク質に、小分子プロテアソーム阻害薬を「抱かせる」。 このキャリアがAPC/CやSCFによってユビキチン化され、サイクリンと同様にプロテアソームへ搬送されると、阻害薬が20S触媒室へ到達して不可逆的に結合・蓄積する。
ユビキチン受容体ヒッチハイク: Rpn10/Rpn13などのユビキチン受容体に高親和性のタグを付けた薬剤コンジュゲートを設計。 サイクリンが投入されるたびに同じ輸送レーンを使って薬剤も取り込まれ、触媒室で活性化・結合する。
“自殺基質”型プロドラッグ: プロテアソームによる切断でのみ活性化されるマスキング基を付与。 サイクリン処理時にプロテアソーム内で切断→活性体がその場でβ5(キモトリプシン様)サイトなどへ共有結合して滞留。
DUB同梱戦略: USP14/UCHL5などプロテアソーム関連DUBに結合するモジュールを介して足場を確保し、近接活性化で阻害薬を触媒室へ送り込む。
Why this could be selectively cytotoxic to cancer
イベント依存の濃度増幅: サイクリン分解イベントの頻度が高い細胞ほど、プロテアソーム内の阻害薬“在庫”が増える。
局在選択性: 細胞質全体のオフターゲット暴露を減らし、プロテアソーム内部の実効濃度を上げることで副作用リスクを抑える。
動的自己増強: がん細胞の分裂が続く限り、投薬後も内因性イベントが追加蓄積を駆動するため、耐性立ち上がりを遅らせ得る。
Key design parameters and trade-offs
デリバリー効率: サイクリンルートに確実に乗るためのデグロン親和性とユビキチン化効率の最適化が必須。
活性化タイミング: 触媒室到達後にのみ解除されるプロドラッグ設計で、細胞外/細胞質での早期活性化を防ぐ。
結合様式: β5サブユニットへの不可逆結合を主としつつ、過度な恒常阻害で正常組織の蛋白恒常性を崩しすぎないよう、結合速度と脱離性のバランス調整。
逃避経路対策: プロテアソーム活性低下に伴うオートファジー代償の立ち上がりを見込み、必要ならオートファジー調整薬やERストレス増強薬との少量併用も検討。
Experimental roadmap to validate the concept
イベント連動集積の可視化: サイクリンパルス(同期分裂)条件下で、活性ベースプローブ(ABP)やクリック化タグを用い、プロテアソーム内シグナルの時間経過を定量。
選択性の検証: 高分裂株(EGFR変異NSCLC、MYC高発現)と低分裂株/正常細胞で、内在性分裂指標と阻害蓄積量の相関を評価。
機能 readouts: β5活性、ポリユビキチン化タンパク蓄積、UPR/CHOP誘導、アポトーシスマーカー(caspase-3/7、PARP切断)を濃度・時間でプロファイル。
逃避・耐性解析: DUB発現変化、オートファジーフラックス、免疫原性細胞死(DAMPs放出、ATP/カルレティキュリン露出)の評価。
in vivo 検証: 高分裂腫瘍モデルでPK/PDと毒性の窓を確認。骨髄抑制・末梢神経毒性などプロテアソーム阻害特有の副作用の閾値を定義。
Translational considerations
製剤設計: ペプチド性キャリアの場合はペグ化や環状化で安定化。小分子なら脂溶性・極性のバランスを調整し腫瘍集積性を付与。
バイオマーカー: サイクリンターンオーバー速度(Cyclin B1/B2、Eのパルス)、Ki-67、APC/C活性指標を患者選択に活用。
併用戦略: EGFR阻害薬+本剤で分裂駆動の抑制と“イベント誘導蓄積”を同時に狙う、あるいはスタチンで膜直下RAS系を弱め、細胞死へのドライブを強化。
このコンセプト、あなたのこれまでの着眼(分裂回数・サバイバル経路・スタチン・FAS/FLIP)に一本の線でつながっています。もし具体的なキャリア分子や阻害コアの候補を挙げられるなら、合成可能性と試験設計まで一緒に詰めましょう。
Concept refinement for cyclin B–targeted accumulation
あなたの「Cyclin Bに尿酸が結合する知見を基に、類似低分子を設計しPEG化して“分裂イベント連動でプロテアソームに薬剤を蓄積させる”」戦略は、分子設計と細胞周期同期の観点から非常に筋が通っています。以下、実装に向けた要点を整理します。
Binding validation and ligand design
結合部位の同定: 尿酸のDOCKING結果から、Cyclin Bのポケット(疎水性・水素結合ドナー/アクセプター配置)を特定し、相互作用マップを抽出する。
誘導体設計の方向性:
保持: 尿酸核の二重結合とカルボニルの水素結合ネットワークは維持。
強化: 片側に疎水フラグ(小型芳香族、フッ素化アルキル)を付与してポケット奥の疎水性と補完。
アンカーポイント: PEG結合用のハンドルは、結合に関与しない面に置く(例:N-置換、側鎖アミド化)。
代替核の検討: キサンチン系・プリン類縁体・イミダゾトリアジンなど、尿酸様の水素結合幾何を持つ核でSARを広げる。
バインディング実証: ITC/SPRでKd・熱力学を測定、NMR化学シフトで結合部位を確認。Cyclin B–CDK1複合体での選択性も評価。
Event-coupled delivery and proteasome engagement
デグロン同乗設計: リガンド(尿酸誘導体)側に短鎖ペプチドタグを付け、Cyclin BのAPC/C依存分解(D-box/KEN-box)の輸送レーンに“ヒッチハイク”する。タグはミニペプチド化(8–12 aa)で細胞内安定性を確保。
プロドラッグ化: プロテアソームのトリプシン様/キモトリプシン様活性でのみ解除されるペプチド性マスキングを付与し、到達後に阻害コアが露出する仕組みにする。
阻害コアの選択:
共有結合型(例:エポキシケトン様モチーフ): β5サイトに不可逆結合し蓄積効果を最大化。
可逆型(ボルテゾミブ様): 正常組織の安全域を広げるため、結合速度を抑えた設計も並行検討。
PEGylation strategy
サイズと形状: 2–10 kDaの線状PEGから開始し、環状/分岐PEGで血中半減期と腫瘍移行性を最適化。過度なPEGは細胞内取り込みを阻害し得るため段階的に評価。
リンカー設計:
切断感受性: プロテアソーム/ライソソームで切れるペプチドリンカー(Val-Cit、Gly-Phe-Leu-Glyなど)を検討。
位置選択: リガンド側は結合に非関与面、阻害コア側は活性化に必要な自由度を確保。
距離: 3–15原子のスペーサーでステリック干渉を回避し、Cyclin結合を保つ。
ステルス性と免疫性: 末端メトキシ化PEGで非特異結合と免疫原性を低減。反復投与では抗PEG抗体のリスクもモニタリング。
Proof-of-concept experiments
結合と同乗:
Pull-down/Co-IP: 尿酸誘導体-PEGコンジュゲートとCyclin Bの結合、ユビキチン化後の輸送複合体への同乗を確認。
細胞周期同期: G2/M同期で処理し、Cyclin B分解パルスに伴う化合物のプロテアソーム内集積を追跡(ABP・クリック化)。
機能 readouts:
β5活性低下、ポリユビキチン蓄積、CHOP/ATF4誘導の時系列解析。
分裂依存性: Ki-67高群での効果増幅、低分裂正常細胞でのオフターゲット抑制。
選択性と安全域: 造血系前駆細胞や神経様細胞で毒性閾値を定義。オートファジー代償の立ち上がりはLC3-II/パンオートファジーフラックスで併記。
Risk and mitigation
結合の競合: Cyclin Bに他タンパクが競合する可能性があるため、複合体(Cyclin B–CDK1)での結合確認と、機能阻害の有無を評価。
過度のプロテアソーム阻害: 正常組織の恒常性崩壊を避けるため、可逆阻害版と低活性版を用意し、分裂イベント依存の蓄積で実効阻害を稼ぐ設計にする。
耐性化: DUB(USP14/UCHL5)アップレギュレーションやオートファジー代償に備え、低用量のDUB阻害またはERストレス増強薬との併用探索。
Milestones
M1: 尿酸誘導体シリーズの合成とCyclin B結合の定量(Kd、SAR)。
M2: PEG/リンカー最適化で細胞内取り込みとプロテアソーム到達の可視化。
M3: 分裂依存蓄積の相関検証(同期パルス、時間分解ABP)。
M4: in vivoでPK/PDと毒性窓の評価、適応腫瘍タイプ選定(EGFR変異NSCLC、MYC増幅など高分裂腫瘍)。
もし、現在お持ちのDOCKINGデータで「結合ポケットの残基マップ(H-bond、π–π、疎水)」「推定Kd」「結合姿勢」が分かるなら、優先する誘導体修飾とPEG結合位置を具体化できます。どの残基に主要相互作用が乗っていましたか?
2025年11月18日 | カテゴリー:AUTODOCK VINA,CLUS PRO/BIOINFORMATICS, 癌の病態生理と治療学 |




