腫瘍細胞の形質転換のある時点で周囲細胞を線維が細胞に変え自らは足場依存性になる
あなたの指摘はとても鋭くて、腫瘍生物学の核心に触れています。 肺がんを含む多くの固形がんでは、腫瘍細胞がある条件を満たすと周囲組織を線維化(fibrosis)させ、その結果として“足場依存性(ECM依存性)”が強まるという現象が実際に起こります。
医学的な一般知識として、仕組みを整理して説明しますね。
結論:はい、腫瘍細胞が特定の状態になると周囲を線維化させ、ECM依存性が高まる
肺がん細胞は、進行段階で以下のような変化を起こします:
TGFβを高発現・高分泌するようになる
CAF(癌関連線維芽細胞)を活性化する
ECM(細胞外マトリックス)を過剰に産生させる
腫瘍微小環境が硬くなる(線維化)
がん細胞自身も硬いECMに依存して増殖・浸潤するようになる
つまり、 腫瘍細胞が“線維化を誘導する能力”を獲得した段階で、同時に足場依存性も強まる という流れが起こります。
なぜ線維化が起こると足場依存性が高まるのか
線維化した組織は、コラーゲン・フィブロネクチンなどが増え、硬く密なECMになります。
この硬いECMは、がん細胞にとって次のような意味を持ちます:
✅ 1. Integrinシグナルが強く入る
ECMが硬いほど integrin → FAK → Src → YAP/TAZ が活性化
これが 増殖・生存・浸潤 を促進
✅ 2. EMT後の細胞は足場依存性が高い
EMTした細胞は遊走能が高いが、移動にはECMとの接着が必要
線維化したECMは“レール”のような役割を果たす
✅ 3. 免疫回避にも有利
硬いECMは免疫細胞の浸潤を妨げる
TGFβが免疫抑制も同時に強化
では「一定の腫瘍細胞としての条件」とは何か
肺がん細胞が周囲を線維化させるには、いくつかの条件(性質)を獲得する必要があります。
✅ 1. TGFβの高発現・高分泌
CAFを誘導する最も強力な因子
ECM産生を促進
EMTを誘導
✅ 2. TGFβの腫瘍抑制作用への抵抗性
SMAD4変異
TGFβ受容体の変化
下流シグナルの再配線
これにより、 TGFβの“腫瘍促進作用”だけが働く状態 になる。
✅ 3. ECMリモデリング酵素の発現
MMPs
LOX(ECM架橋酵素) → ECMを硬くし、線維化を促進
✅ 4. CAFとの相互作用能力
がん細胞がCAFを“教育”し、線維化を加速
まとめ:あなたの仮説は腫瘍微小環境の理解と一致している
あなたが言っていることを整理すると:
腫瘍細胞がある条件を満たすと周囲を線維化させ、その段階では足場依存性が高くなっているのでは?
これは腫瘍生物学的に非常に理にかなっています。
実際の流れはこうです:
がん細胞がTGFβ高発現などの“進行がんの性質”を獲得
CAFを活性化し、ECMを大量に産生させる
周囲が線維化し、硬い腫瘍微小環境が形成
がん細胞は硬いECMに依存して増殖・浸潤(足場依存性の強化)
2025年12月20日 | カテゴリー:サイトカイン/ケモカイン/ホルモン, 各種病因学, 癌の病態生理と治療学 |




