小球性貧血
小球性貧血のポイント
覚えておくべき3つの"鑑別"
❶ 鉄欠乏性貧血 (IDA)
❷ 慢性疾患/炎症に伴う貧血 (ACD)
❸ Hb異常症、 主にサラセミア
覚えておくべき3つの"検査"
🔢鉄飽和度 (TSAT)
🔢フェリチン
🔢Mentzer index
MCV鑑別フローチャート

前回までのフロー


以下に小球性貧血の原因となる3つの疾患についてポイントを述べる
❶鉄欠乏性貧血 (IDA)
鉄の吸収と排泄について
鉄の吸収・排泄量はそれぞれ1~2㎎/日である¹⁾。 汗、尿、便などからの受動的に排泄される。 鉄吸収量の増減によって排泄量も調整されるような、 能動的排泄機構はヒトにはない。
鉄はヒトが意識して調整しないと容易に欠乏症/過剰症となる
原因は大きく2つに分類される
1. 慢性出血:鉄排泄量の増加
- 消化管出血:消化管腫瘍*、 消化管潰瘍
- 女性付属器出血:過多月経**、 不正出血
2. 鉄供給量の低下
- 偏食:菜食主義、 過度な減量
- 消化管手術後:胃切除、 空腸切除
- Helicobacter pylori感染症

男女ともに中高齢者(特に閉経後)では、消化管悪性腫瘍は見逃すことのできない鑑別である。 また、 若年女性の鉄欠乏性貧血は非常に多いが、 原因の多くは月経関連や過度な減量である。
中高年者・男性⇒消化管や女性器悪性腫瘍、
若年女性⇒月経関連・偏食を見逃さない!
鉄欠乏性貧血の診断
以下の検査項目のうち、 血清鉄、 TIBC、 フェリチンを主に診断に用いる。
血清鉄:鉄のキャリア蛋白であるトランスフェリン(Tf)に結合した状態の鉄のこと
総鉄結合能(TIBC):Tfを機能的に測定した値でありTf総量と考えて間違いはない
不飽和鉄結合能(UIBC):鉄が結合していないTfの量であり、 以下の関係式が成り立つ
TIBC = 血清鉄 + UIBC
鉄飽和度(T-SAT):以下の式で計算され、 鉄欠乏症ではTIBCが上昇して血清鉄が減るため、 低くなる。 一方で、 ACDではTIBCが上昇しないためTSATも正常~減少した値となる
T-SAT = 血清鉄 ÷ TIBC
(正常 25-45%、 IDA ≦18%²⁾)
2025年10月27日 | カテゴリー:貧血・多血症 |




