RSMDの評価の仕方
RMSD(Root Mean Square Deviation)の評価方法について学べる教育的なサイトはいくつかあります。例えば、以下のサイトが参考になります:
: GROMACSを用いた分子動力学シミュレーションの解析方法を詳しく解説しており、RMSDの計算方法についても説明されています。
: RMSDの定義や計算方法、応用例について詳しく解説されています。
: PyMOLを使った分子の重ね合わせとRMSDの計算方法について説明しています。
これらのサイトを参考にすると、RMSDの評価方法についてより深く理解できると思います。
RMSD解析
RMSD(Root Mean Square Deviation)は、分子動力学シミュレーションにおいて、分子の構造変化を時間に渡って追跡するための解析手法です。RMSDは、シミュレーション中の各フレームの原子の位置を、参照構造と比較して、どれだけ変化しているかを測定します。
今回は先ほど作成した UNL_Heaby
がシミュレーション中でどのくらい変化しているかを見ます。
まずはcdでMD simulationで得られたデータが入っているディレクトリに移動してください。
md_0_10.tpr
、 md_0_10_center.xtc
、index.ndx
の三つが入っているか解説してください。
RMSD解析
gmx rms -s md_0_10.tpr -f md_0_10_center.xtc -n index.ndx -tu ns -o rmsd.xvg
このコマンドは、GROMACSのgmx rms
ツールを使って、分子動力学(MD)シミュレーションのRMSD(Root Mean Square Deviation、二乗平均平方根偏差)を計算するためのものです。特定の構造(例: エネルギー最小化後の構造)とシミュレーション中の構造との違いを時間経過に伴って測定します。RMSDは、シミュレーションの安定性や系の構造変化を評価するための重要な指標です。
gmx rmsは、GROMACSのRMSDを計算するためのコマンドです。このツールは、リファレンス構造(通常はエネルギー最小化後の構造など)に対する各時点のシミュレーション構造の座標を比較し、RMSDを計算します。
gmx rms
は、GROMACSのRMSDを計算するためのコマンドです。このツールは、リファレンス構造(通常はエネルギー最小化後の構造など)に対する各時点のシミュレーション構造の座標を比較し、RMSDを計算します。s
はリファレンス構造を指定するオプションです。ここでは、エネルギー最小化後の構造情報が入ったem.tpr
ファイルを指定しています。このファイルは、RMSD計算時の基準となる構造です。通常はシミュレーション開始時の最適化された構造を使用します。f
は、RMSDを計算するために使用するシミュレーションの軌道(トラジェクトリ)ファイルを指定します。ここでは、軌道ファイルmd_0_10_center.xtc
を指定しています。このファイルにはシミュレーション中の構造の座標情報が含まれており、特定の基準構造との比較に使われます。n
はインデックスファイルを指定するオプションです。index.ndx
ファイルには、特定の原子や分子グループが定義されています。このファイルを使うことで、RMSDを計算する際にどの部分(タンパク質全体、特定のサブユニット、リガンドなど)を比較対象とするかを指定できます。たとえば、タンパク質の主鎖のみや、リガンドのRMSDを計算したい場合に便利です。tu
は時間単位を指定するオプションで、ここではns
(ナノ秒)を指定しています。これにより、出力されるRMSDデータの時間単位がナノ秒になります。デフォルトではピコ秒(ps)ですが、ナノ秒の方が長時間シミュレーションでは扱いやすいです。o
は、RMSD計算結果の出力ファイル名を指定します。ここでは、rmsd.xvg
という名前のファイルにRMSDのデータが出力されます。このファイルは、Xmgraceなどのプロットツールで可視化できる形式(.xvg
)です。時間とRMSD値の変化をグラフ化する際に使用します。
以下のように出力されます。
Command line:
gmx rms -s em.tpr -f md_0_10_center.xtc -n index.ndx -tu ns -o rmsd.xvg
Reading file em.tpr, VERSION 2024 (single precision)
Reading file em.tpr, VERSION 2024 (single precision)
Select group for least squares fit
Group 0 ( System) has 169799 elements
Group 1 ( Protein) has 13165 elements
Group 2 ( Protein-H) has 6560 elements
Group 3 ( C-alpha) has 890 elements
Group 4 ( Backbone) has 2670 elements
Group 5 ( MainChain) has 3562 elements
Group 6 ( MainChain+Cb) has 4342 elements
Group 7 ( MainChain+H) has 4414 elements
Group 8 ( SideChain) has 8751 elements
Group 9 ( SideChain-H) has 2998 elements
Group 10 ( Prot-Masses) has 13165 elements
Group 11 ( non-Protein) has 156634 elements
Group 12 ( Other) has 29 elements
Group 13 ( UNL) has 29 elements
Group 14 ( NA) has 23 elements
Group 15 ( Water) has 156582 elements
Group 16 ( SOL) has 156582 elements
Group 17 ( non-Water) has 13217 elements
Group 18 ( Ion) has 23 elements
Group 19 ( Water_and_ions) has 156605 elements
Group 20 ( Protein_UNL) has 13194 elements
Group 21 ( UNL_Heaby) has 14 elements
Select a group:
4を選択してください。
Select group for RMSD calculation
Group 0 ( System) has 169799 elements
Group 1 ( Protein) has 13165 elements
Group 2 ( Protein-H) has 6560 elements
Group 3 ( C-alpha) has 890 elements
Group 4 ( Backbone) has 2670 elements
Group 5 ( MainChain) has 3562 elements
Group 6 ( MainChain+Cb) has 4342 elements
Group 7 ( MainChain+H) has 4414 elements
Group 8 ( SideChain) has 8751 elements
Group 9 ( SideChain-H) has 2998 elements
Group 10 ( Prot-Masses) has 13165 elements
Group 11 ( non-Protein) has 156634 elements
Group 12 ( Other) has 29 elements
Group 13 ( UNL) has 29 elements
Group 14 ( NA) has 23 elements
Group 15 ( Water) has 156582 elements
Group 16 ( SOL) has 156582 elements
Group 17 ( non-Water) has 13217 elements
Group 18 ( Ion) has 23 elements
Group 19 ( Water_and_ions) has 156605 elements
Group 20 ( Protein_UNL) has 13194 elements
Group 21 ( UNL_Heaby) has 14 elements
Select a group:
21を選択してください。
上記の設定は、シミュレーション中にリガンド(UNL_Heavy)がタンパク質の主鎖構造に対してどのように動いたか、その相対的な変化を計算するためのものです。RMSD値が時間とともに安定している場合、リガンドは基準構造(タンパク質の主鎖)に対して安定していることを意味し、大きく変動する場合はリガンドがシミュレーション中に動き回ったことを示します。
ls
コマンドを押して、以下のrmsd.xvg
あるか確認してください。
rmsd.xvg
をテキストで開いた後、エクセルなどで張り付けてグラフを作成してください。
以下のようにRMSDができます。
このRMSDの変動パターンから、シミュレーションの最初の25 nsでは大きな構造変化が起こっていたが、以降は徐々に安定し、最終的には構造が収束していると考えられます。これにより、リガンドが結合部位に安定した可能性が示唆されますが、いくつかの時間点で再び変動が見られるため、完全に安定した結合ではない可能性もあります。
2025年5月15日 | カテゴリー:AUTODOCK VINA,CLUS PRO/BIOINFORMATICS |