無効造血
SF3B1, SRSF2, U2AF1, RUNX1, TP53
良い視点ですね。MDS(骨髄異形成症候群)で「無効造血」が起こるとき、赤芽球系に巨赤芽球性(メガロブラスティック)変化が見られることがあります。これはビタミンB12や葉酸欠乏による古典的な巨赤芽球性貧血とは異なり、遺伝子異常によるRNAスプライシングやDNA合成障害が背景にあると考えられています。
報告されている原因遺伝子
MDSにおける赤芽球系のメガロブラスティック変化は、以下の遺伝子異常と関連が強いとされています:
スプライシング因子遺伝子
SF3B1:環状鉄芽球を伴うMDSで高頻度に変異。赤芽球の成熟異常や核細胞質乖離を引き起こす。
SRSF2, U2AF1, ZRSR2:RNAスプライシング異常により、赤芽球系のDNA合成や分化に障害。
DNA修復・クロマチン関連遺伝子
DNMT3A, TET2, ASXL1:エピジェネティック制御異常により造血幹細胞の分化が阻害され、赤芽球系に異形成。
ATRX:染色体構造維持に関与し、赤芽球成熟異常と関連。
造血関連シグナル遺伝子
RUNX1:造血幹細胞分化のマスター遺伝子。変異により赤芽球系の成熟障害。
TP53:DNA損傷応答の破綻により、赤芽球の核異常や巨赤芽球性変化を助長。
まとめ
MDSでの赤芽球系メガロブラスティック変化は、葉酸・B12欠乏ではなく、スプライシング因子変異やDNA修復遺伝子異常が原因。
特に SF3B1, SRSF2, U2AF1, RUNX1, TP53 などが報告されている。
これらの遺伝子異常は「無効造血」の分子基盤を説明する重要な要素。
ご希望なら、「MDSにおける赤芽球異形成と関連遺伝子の一覧表」を作って整理できます。表形式でまとめてみましょうか?
答え: これら5つの遺伝子はMDS(骨髄異形成症候群)を含む造血系腫瘍でよく変異が見つかる代表的な分子で、それぞれ異なる機能を持ちます。簡潔にまとめると以下の通りです。
各遺伝子の機能
SF3B1
スプライソソーム複合体の構成要素。
RNAスプライシングの認識部位(branch point)に関与し、正しいイントロン除去を担う。
変異すると異常スプライシングが起こり、特にMDSでは環状鉄芽球の形成に強く関連。
SRSF2
セリン/アルギニンリッチスプライシング因子。
エクソン選択を制御し、mRNAの多様性を生み出す。
変異によりエクソン認識が偏り、造血幹細胞の分化障害や腫瘍化につながる。
U2AF1
U2AF複合体のサブユニット。
3’スプライス部位の認識に必須。
変異するとイントロン除去が異常になり、赤芽球系の成熟障害や無効造血を引き起こす。
RUNX1
転写因子(AML1とも呼ばれる)。
造血幹細胞の分化・増殖を制御するマスター遺伝子。
染色体転座や変異で機能が失われると、白血病やMDSの発症に直結する。
TP53
「ゲノムの守護者」と呼ばれる腫瘍抑制遺伝子。
DNA損傷応答・細胞周期停止・アポトーシス誘導を担う転写因子。
変異するとDNA修復ができず、異常細胞が生き残り腫瘍化する。MDSでは予後不良因子。
まとめ
SF3B1, SRSF2, U2AF1 → RNAスプライシング異常
RUNX1 → 造血幹細胞分化の転写制御
TP53 → DNA損傷応答と腫瘍抑制
これらの遺伝子はそれぞれ異なる経路を担いながら、造血幹細胞の成熟障害・無効造血・腫瘍化に共通して関与しています。
Sources:
RUNX1の機能解説
TP53の機能解説
ご希望なら、この5遺伝子を「MDSでの臨床的意義(予後・治療反応)」と関連づけて表形式で整理することもできます。表でまとめてみますか?
2025年11月12日 | カテゴリー:各種病因学, 癌の病態生理と治療学 |




