共振の物理モデル
物理の「共振(resonance)」は、どの分野でも “外部からの周期的な刺激が、系の固有振動数と一致したときに振幅が大きくなる現象” として統一的に理解できる。
ただし、対象が違えばモデル(微分方程式)も変わる。
代表的な共振モデルを体系的にまとめるね。
1. 減衰付き調和振動子(最も基本的な共振モデル)
外力 (F_0\cos(\omega t)) を受ける質点の運動方程式:
[ m\ddot{x} + b\dot{x} + kx = F_0\cos(\omega t) ]
- (m):質量
- (b):減衰係数
- (k):ばね定数
- (\omega):外力の角振動数
共振条件:
[ \omega \approx \omega_0 = \sqrt{\frac{k}{m}} ]
減衰が小さいほど、共振ピークは鋭くなる。2. 連成振動子(2つの振動体の共振)
二つの質点がばねで結合されているモデル:
[ m\ddot{x}_1 + kx_1 + k_c(x_1 - x_2) = 0 ] [ m\ddot{x}_2 + kx_2 + k_c(x_2 - x_1) = 0 ]
- (k_c):結合の強さ
固有モードは2つ:
- 同相モード
- 逆相モード
エネルギーが行き来する「ビート」や「共鳴転移」が起こる。

3. RLC回路の共振(電気回路の共振)
電気回路の共振は機械振動と完全に同型。
[ L\ddot{q} + R\dot{q} + \frac{1}{C}q = V_0\cos(\omega t) ]
- (L):インダクタンス
- (R):抵抗
- (C):キャパシタンス
共振角周波数:
[ \omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}} ]
電気回路の共振はフィルタ、アンテナ、無線通信の基礎。
4. 音響共鳴(空気柱・共鳴箱)
■ 開管(両端開)の固有振動数
[ f_n = \frac{n v}{2L} \quad (n=1,2,3,\dots) ]
■ 閉管(片端閉)の固有振動数
[ f_n = \frac{(2n-1)v}{4L} ]
音叉+共鳴箱は、
音叉の固有振動数と箱の固有振動数が一致すると音量が増大する。
5. 光学共振(ファブリ・ペロー共振器)
光が鏡の間で反射しながら共鳴するモデル。
共振条件:
[ 2L = m\lambda ]
- (L):鏡間距離
- (\lambda):波長
レーザーの基本原理。
6. 原子・量子系の共鳴(Rabi振動)
外部電磁場と二準位系の相互作用:
[ i\hbar \frac{d}{dt} \begin{pmatrix} c_1 \ c_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & \Omega e^{-i\omega t} \ \Omega e^{i\omega t} & \Delta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} c_1 \ c_2 \end{pmatrix} ]
- (\Omega):結合強度
- (\Delta = \omega_0 - \omega):共鳴条件
(\Delta = 0) のとき最大遷移(共鳴吸収)。
7. 流体の共鳴(ヘルムホルツ共鳴器)
瓶を吹いたときの「ボー」という音。
[ \omega = \sqrt{\frac{A v^2}{V L}} ]
- (A):開口面積
- (V):容積
- (L):首の長さ
8. 構造物の共振(橋・ビルの振動)
建築物は多自由度振動系でモデル化される:
[ M\ddot{x} + C\dot{x} + Kx = F(t) ]
- (M):質量行列
- (C):減衰行列
- (K):剛性行列
固有値解析で共振周波数が求まる。
9. 非線形共振(Duffing振動子)
強い振動や大振幅で現れる非線形共振:
[ \ddot{x} + \delta\dot{x} + \alpha x + \beta x^3 = \gamma\cos(\omega t) ]
- 共振曲線が折れ曲がる
- ジャンプ現象
- カオス
など、線形とは全く違う振る舞いをする。
まとめ:共振モデルの分類
| 分野 | モデル | 方程式の特徴 |
|---|---|---|
| 機械振動 | 調和振動子 | (m\ddot{x}+b\dot{x}+kx) |
| 電気回路 | RLC回路 | (L\ddot{q}+R\dot{q}+\frac{1}{C}q) |
| 音響 | 空気柱・共鳴箱 | 波動方程式+境界条件 |
| 光学 | 光共振器 | 干渉条件 (2L=m\lambda) |
| 量子 | 二準位系 | シュレーディンガー方程式 |
| 流体 | ヘルムホルツ | 幾何学的パラメータ |
| 建築 | 多自由度振動 | 行列方程式 |
| 非線形 | Duffing | (x^3) 項を含む |
もし興味があれば、
- どの分野をもっと深く知りたいか
- 実際に方程式を解いた例
- 共振曲線(振幅 vs 周波数)を描く
- 連成振動の固有値解析
など、さらに踏み込んだ内容も展開できるよ。
Q値
| 品質係数Q quality factor | |
|---|---|
| 量記号 | Q |
| 次元 | 無次元量 |

Q値(英: quality factor)または品質係数Qは主に振動の状態を表す無次元量である。弾性波の伝播においては、媒質の吸収によるエネルギーの減少に関係する値である。振動においては、系に蓄えられるエネルギーを、一周期の間に系から散逸するエネルギーで割ったもので、この値が大きいほど振動が安定であることを意味する。また、Q値は振幅増大係数とされる場合もある。これは、共振周波数近傍での強制振動における最大振幅が静的強制力による変位のQ倍となることから解釈される。振動子や電気回路の場合には一般にQ値が高いほうが望ましいが、逆にQ値が高いほど応答性が悪くなり、起動時間が長くなるという面もある。
振動する物理量の実際の振動状態は、周波数軸に展開した振動振幅(英: Amplitude)や位相(英: Phase)のスペクトラムにより理解される。振動スペクトラムの共振ピーク近傍の形はその振動系の振動状態を特徴付ける。Q値とは
Q=ω0ω2−ω1
で定義される無次元数。ここで、ω0、ω1、ω2 はそれぞれ共振ピークでの共振周波数、共振ピークの左側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数、共振ピークの右側において振動エネルギーが半値となる周波数である。ここでω2−ω1 を半値幅と呼ぶ。
Q値の低い機械振動系は振動エネルギーの分散が大きい系である。 Q値の高い構造物では一旦振動が開始されると振動が長く続く。
Q値が低い素材は振動がすぐに減少する性質がある。これを利用して防振材、防音材に用いられる。
電気工学

電子工学の分野でも共振回路の共振のピークの鋭さを表す値「Q」(Quality factor)として一般的に用いられる。定義は上記と同一であり、インダクタとキャパシタを用いた直列共振回路の場合、
Q=1RLC
と表せる。これはインダクタンス L を大きくしてキャパシタンス C を小さく、直列抵抗 R を少なくするほど Q が大きくなることを示す。このため、選択度を稼ぐ必要がある共振回路においては、インダクションコイルの線径を太くして抵抗値を押さえ、大径・粗ピッチで巻いて分布容量を減らすなどの工夫をする。 また、角振動数は、
ω=1LC
を用いることで、
Q=ωLR=1ωCR
と表せる。
また、水晶振動子はLC共振回路に比べて Q が大きいため、正確で安定した発振回路向けの共振回路として一般に用いられる。水晶自体が数百万に達する高いQ値を持っているため、それを利用した回路では、数千から数万が達成できる。一般的なLC共振器のQは数十程度で、周波数が高いほどQ値は下がる。

並列回路の場合は
Q=RCL
となる[1]。
機械工学
1自由度のばね-質量系において、Q値は機械的抵抗を用いて表現できる。
Q=MKR
ここで M は質量, K は弾性率で R は機械的抵抗である。 ばね-質量系の角振動数を用いて、
ω=KM
また、別の表現をすれば、
Q=ωMR
と導出できる。
Qは減衰定数 ζ 、損失率 η を用いて、
Q=12ζ=1η
と表される。
ここで、周期的に外力が作用する強制振動を考える。
d2xdt2+2ζωndxdt+ωnx=−F0kωn2cosωt
この解は、
x=Acosωt+Bsinωt
となるから、 sin成分とcos成分のそれぞれの係数を比較することにより連立方程式を立てて解くと、
x=F0k1{1−(ωωn)2}2+(2ζωωn)2[{1−(ωωn)2}cosωt+2ζωωnsinωt]
このとき、共振周波数:ω=ωnにおける振動を考えると
x(ωn)=F0k12ζsinωt
したがって、
x(ωn)=F0kQsinωt
なお、静的荷重時の変位x0は、
x0=F0k
となるから、共振周波数での振幅との比は、
x(ωn)x0=Q
したがって、共振周波数において、振動振幅は静的荷重時のQ倍に増大する。
光学
光学的には、空洞共振器のQ値は以下の式で求められる。
Q=2πνEP
ここでν は共振周波数、 E はキャビティに蓄えられるエネルギー、 P=−dEdt は散逸率である。光学的Q値は、共振周波数をその共振器の半価幅で割ったものに等しい。キャビティ内の光子の寿命は、このQ値に比例する。 レーザーの技術の一つとして、キャビティのQ値を切り替えることによって、高出力を得ることができる。この技術はQスイッチと呼ばれている。
メスバウアー効果による共鳴現象のQ値は数ギガに達する。
材料科学
誘電体材料においてtanδの逆数として定義される。一般的には、誘電率の高い材料ほどQ値が低く、周波数の上昇に伴って低下する。したがって、Q値ではなく、周波数との積であるfQ積の値を用いて、材料の良否を判断することが多い。
脚注
2026年1月27日 | カテゴリー:物理数学統計諸計算 |




