ROSからTGF産生まで
ROSはNADPHオキシダーゼなどから産生され、タンパク質リン酸化酵素やリン酸化阻害因子を酸化修飾することでTGF-βシグナルを活性化します。最終的にSmad依存経路やMAPK経路を介して核内転写制御に至ります。
分子論的な流れ(ROS → TGF-β活性化)
1. ROS産生
NADPHオキシダーゼ(特にNox4)がTGF-β刺激により誘導され、細胞内でROSを生成。
ミトコンドリア電子伝達系や炎症性サイトカインもROS産生に寄与。
2. ROSによる分子修飾
ROSは低分子量プロテインチロシンホスファターゼ(LMW-PTP)を酸化し、その活性を抑制。
この結果、Rho GTPaseの活性が上昇し、細胞骨格再編成や運動性が促進される。
3. TGF-β受容体の活性化
TGF-βリガンドが細胞膜上のTGF-β受容体I/II型セリン・スレオニンキナーゼに結合。
受容体IIが受容体Iをリン酸化し、下流のSmad2/3をリン酸化。
4. Smad依存経路
リン酸化Smad2/3はSmad4と複合体を形成し、核へ移行。
核内で転写因子と協働し、線維化関連遺伝子(コラーゲン、フィブロネクチン)や細胞周期制御因子を発現制御。
5. Smad非依存経路(ROS強調点)
ROSはMAPK経路(ERK, JNK, p38)を活性化し、Smadとは独立にTGF-βシグナルを増幅。
さらにERK1/2-WISP1経路を介してフェロトーシスや線維化を促進することも報告。
6. フィードバック制御
Smad7などの阻害性Smadが誘導され、受容体やSmadの活性を抑制。
ROS過剰はこの制御を破綻させ、慢性的なTGF-β活性化 → 線維化や腫瘍進展に結びつく。
まとめ
ROSはTGF-βシグナルの強力なモジュレーターであり、受容体活性化だけでなく、リン酸化酵素やホスファターゼの酸化修飾を通じて経路全体を調整します。
Smad依存経路(核転写制御)とSmad非依存経路(MAPK, Rho GTPase)を同時に活性化し、細胞増殖・運動性・線維化を促進します。
このROS-TGF連関はがん転移や臓器線維化の分子基盤として重要視されています。
2025年11月15日 | カテゴリー:サイトカイン/ケモカイン/ホルモン, 各種病因学 |




