GLP-1と心不全
GLP-1受容体作動薬は、特に肥満を伴う駆出率保持型心不全(HFpEF)に対して、症状改善・体重減少・QOL向上などの臨床効果が報告されています。死亡率や入院率への直接的な影響は限定的ですが、補助的治療として注目されています。
GLP-1受容体作動薬とは?
元々は2型糖尿病治療薬として開発された薬剤。
血糖降下作用に加え、体重減少・食欲抑制・心血管保護作用があることが判明。
代表薬:リラグルチド(LEADER試験)、セマグルチド(SUSTAIN試験)など。
心不全に対する臨床効果
✅ STEP-HFpEF試験(2023年 ESC学会)
対象:肥満合併HFpEF患者(BMI ≥30)
介入:セマグルチド2.4mg週1回 vs プラセボ、52週間
結果:
心不全関連QOLスコア(KCCQ-CSS)が有意に改善(ETD +7.8ポイント、P<0.001)
体重減少も有意(平均−7.3kg)
身体機能の改善(6分間歩行距離の延長)も確認
✅ LEADER試験(リラグルチド)
対象:2型糖尿病+心血管疾患既往
結果:心血管死・非致死性心筋梗塞・脳卒中の複合イベントを13%減少
心不全のタイプ別効果
| 心不全タイプ | GLP-1RAの効果 | コメント |
|---|---|---|
| HFpEF(駆出率保持型) | QOL・体重・運動耐容能の改善 | 肥満合併例で有効性が高い |
| HFrEF(駆出率低下型) | 明確な有効性は未確立 | SGLT2阻害薬の方が推奨される傾向 |
⚠️注意点
死亡率や入院率の直接的な改善効果は限定的。
糖尿病がない心不全患者への適応はまだ研究段階。
SGLT2阻害薬との併用や比較検討が進行中。
✅まとめ
GLP-1受容体作動薬は、肥満を伴うHFpEF患者に対して症状改善・体重減少・QOL向上などの臨床効果を示すことが複数の試験で確認されています。心不全治療の補助的選択肢として、今後の研究とガイドライン改訂が期待されます。




