チウラジールについて
チウラジール錠50mgの概要
商品名 | チウラジール錠50mg |
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一般名 | プロピルチオウラシル錠 |
薬価・規格 | 9.8円 (50mg1錠) |
薬の形状 | 内用薬 > 錠剤 > 錠 |
製造会社 | ニプロESファーマ |
YJコード | 2432002F1054 |
レセプト電算コード | 620009232 |
識別コード | TT |
チウラジール錠50mgの主な効果と作用
- 過剰な甲状腺ホルモンの生成をおさえ、過剰な新陳代謝をおさえる働きがあります。
- 過剰な甲状腺ホルモンによる症状(首がはれる、目が出る、脈拍数が増えるなど)をやわらげるお薬です。
チウラジール錠50mgの用途
チウラジール錠50mgの副作用
主な副作用
頭痛、浮腫、過敏症、AST上昇、ALT上昇、脱毛、皮膚色素沈着、皮膚そう痒感、悪心、嘔吐、下痢
起こる可能性のある重大な副作用
無顆粒球症、白血球減少、発熱、全身倦怠、咽頭痛、再生不良性貧血、低プロトロンビン血症、第7因子欠乏症、血小板減少、血小板減少性紫斑病、紫斑、劇症肝炎、黄疸、重篤な肝障害、肝機能障害、SLE様症状、紅斑、筋肉痛、関節痛、リンパ節腫脹、脾腫、間質性肺炎、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、抗好中球細胞質抗体関連血管炎症候群、ANCA関連血管炎症候群、急性進行性腎炎症候群、血尿、蛋白尿、肺出血、感冒様症状、肘関節痛、膝関節痛、上強膜炎、ANCA陽性血管炎症候群、アナフィラキシー、そう痒、発疹、顔面浮腫、薬剤性過敏症症候群、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現、遅発性の重篤な過敏症状、ヒトヘルペスウイルス6再活性化、HHV-6再活性化、ウイルス再活性化
上記以外の副作用
食欲不振、めまい、末梢神経異常、蕁麻疹、CK上昇、こむらがえり、倦怠感、唾液腺肥大、味覚異常、苦味、味覚減退
チウラジール錠50mgの用法・用量
- プロピルチオウラシルとして、通常、成人に対しては初期量1日300mgを3~4回に分割経口投与する
- 症状が重症のときは1日400~600mgを使用する
- 機能亢進症状がほぼ消失したなら1~4週間ごとに漸減し、維持量1日50~100mgを1~2回に分割経口投与する
- 通常、小児に対しては初期量5歳以上~10歳未満では1日100~200mg、10歳以上~15歳未満では、1日200~300mgを2~4回に分割経口投与する
- 機能亢進症状がほぼ消失したなら、1~4週間ごとに漸減し、維持量1日50~100mgを1~2回に分割経口投与する
- 通常、妊婦に対しては、初期量1日150~300mgを3~4回に分割経口投与する
- 機能亢進症状がほぼ消失したなら、1~4週間ごとに漸減し、維持量1日50~100mgを1~2回に分割経口投与する
- 正常妊娠時の甲状腺機能検査値を低下しないよう、2週間ごとに検査し、必要最低限量を投与する
- なお、年齢、症状により適宜増減する
チウラジール錠50mgの使用上の注意
病気や症状に応じた注意喚起
- 以下の病気・症状がみられる方は、添付文書の「使用上の注意」等を確認してください
患者の属性に応じた注意喚起
- 以下にあてはまる方は、添付文書の「使用上の注意」等を確認してください
年齢や性別に応じた注意喚起
- 以下にあてはまる方は、添付文書の「使用上の注意」等を確認してください
チウラジール錠50mgの注意が必要な飲み合わせ
薬剤名 | 影響 |
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クマリン系抗凝血剤 | 併用開始時・中止時及び病態の変化に応じて血液凝固能が変化 |
ワルファリンカリウム | 併用開始時・中止時及び病態の変化に応じて血液凝固能が変化 |
ジギタリス剤 | 併用開始時・中止時及び病態の変化に応じてジギタリス製剤の血中濃度が変動 |
ジゴキシン | 併用開始時・中止時及び病態の変化に応じてジギタリス製剤の血中濃度が変動 |
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a682465 |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 80%-95% |
代謝 | ? |
半減期 | 2 hours |
排泄 | ? |
データベースID | |
CAS番号 | 51-52-5 |
ATCコード | H03BA02 (WHO) |
PubChem | CID: 657298 |
IUPHAR/BPS | 6650 |
DrugBank | DB00550en:Template:drugbankcite |
ChemSpider | 571424 |
UNII | 721M9407IY |
KEGG | D00562 en:Template:keggcite |
ChEBI | CHEBI:8502en:Template:ebicite |
ChEMBL | CHEMBL1518en:Template:ebicite |
化学的データ | |
化学式 | C7H10N2OS |
分子量 | 170.233 g/mol |
プロピルチオウラシル(Propylthiouracil:略記PTU、別名:6-n-propylthiouracil:略記PROP)は、チオウラシル誘導体の一つで、甲状腺で産生される甲状腺ホルモンの量を減少させる事により甲状腺機能亢進症(バセドウ病を含む)の治療に用いられる[1]。プロピルチオウラシルの重大な副作用として、無顆粒球症や再生不良性貧血がある。
2009年6月、アメリカ食品医薬品局(FDA)はプロピルチオウラシル投与後の肝不全と死亡例を含む肝障害について警告を発表した[2]。その結果、プロピルチオウラシルは成人および小児の抗甲状腺治療の第一選択薬として推奨されなくなった[3]。
WHO必須医薬品モデル・リストに収載されている。世界保健機関 (WHO) の下部組織によるIARC発がん性リスク一覧のグループ2に属する。ヒトに対する発癌性の限られた証拠、動物実験での十分な証拠がある。
開発の経緯
米国では1947年に承認された。日本では1967年8月に承認された。
作用機序
プロピルチオウラシルは甲状腺ホルモンを合成するヨウ化物ペルオキシダーゼを阻害する。ヨウ化物ペルオキシダーゼはヨウ化物イオン(I−)をヨウ素(I0)に酸化してサイログロブリンのチロシン残基をヨウ素化している。この過程は甲状腺ホルモン(T4)の合成に必須の過程である[4]。
プロピルチオウラシルは濾胞細胞の側底膜に存在するナトリウム依存性ヨウ素輸送体を阻害しない。この輸送体は過塩素酸塩およびチオシアン酸塩などで競合的に阻害される。
プロピルチオウラシルはデヨージナーゼを阻害し、T4からより活性の強いT3への変換を妨げる。これはチアマゾールがデヨージナーゼを阻害しないことと対照的と言える。
薬物動態
経口投与されると、血中濃度は1時間以内に最高に達し、甲状腺に積極的に集積される。血中では約7割が蛋白質に吸着しており、生理的pHではイオン化している。一方でチアマゾールは大部分が遊離型で存在する[5]。血中半減期は1時間であり甲状腺機能の状態によらない。甲状腺内での濃度の観点から投与間隔は8時間かそれ以上がよい。排泄は未変化体が10%未満で、他は肝臓で代謝されてグルクロン酸抱合体となる。
プロピルチオウラシルもチアマゾールも胎盤を通過する。
患者の個人差があるが、甲状腺機能が正常化するには2〜4ヶ月を要する。
副作用
添付文書に記載されている重大な副作用は、無顆粒球症[6]、白血球減少、再生不良性貧血、低プロトロンビン血症、第VII因子欠乏症、血小板減少、血小板減少性紫斑病、劇症肝炎、黄疸、SLE様症状(発熱、紅斑、筋肉痛、関節痛、リンパ節腫脹、脾腫等)、間質性肺炎、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎症候群、アナフィラキシー、薬剤性過敏症症候群であるが、全て頻度不明である[7][8]。
無顆粒球症の症状は全身倦怠感と発熱を伴う咽喉、消化管、皮膚の感染である。血小板は血液の凝固に重要であり、減少すると、出血過多を起こす。患者が繰り返し咽頭痛を訴えた場合は副作用を疑い投与を中止すべきである。
命に関わるより重大な副作用は突然の重篤な劇症肝炎であり、死亡する例や肝移植が必要となる例もある。発生率は最大で1⁄10,000程度である。無顆粒球症が治療開始後3ヶ月以内に起こることが多いのに対し、劇症肝炎は治療中何時でも発生しうる[3]。
添付文書に記載される他の副作用は、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、脱毛、色素沈着、そう痒感、紅斑、悪心・嘔吐、下痢、食欲不振、頭痛、眩暈、末梢神経異常、発疹、蕁麻疹、発熱、CK(CPK)上昇、腓返り、筋肉痛、けん怠感、リンパ節腫脹、関節痛、唾液腺肥大、浮腫、味覚異常(苦味、味覚減退等)等であるがどれも頻度不明である[7][8]。
妊婦に対する使用
プロピルチオウラシルは、胎児危険度分類のDに分類されている。Dは、ヒト胎児への明確な危険がある薬剤である。妊婦の命に関わり投与の利益が胎児への危険性を上回る場合にのみ投与すべきである[9]。プロピルチオウラシルは妊娠第一期の妊婦または妊娠最初期の女性においてのみ、チアマゾール(同じくD)より良いとされる。胎児の重要な器官形成期においてチアマゾールが催奇形性を引き起こすからである。妊娠第二期および第三期ではチアマゾールの奇形リスクは減少するので、プロピルチオウラシルの母体への肝障害リスクを考慮すると、チアマゾールの方が推奨される[3]。
プロピルチオウラシルを妊娠末期に服用すると、経胎盤的に胎児に軽度の甲状腺機能低下症が発生する。これは通常、治療せずとも数日間で消失する。甲状腺機能低下状態は、新生児の甲状腺腫として見られ、児の脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモンを増加させる[10]。児の甲状腺腫は報告の約12%に見られる。
ペルオキシダーゼ (peroxidase, EC番号 1.11.1.x[1]) は、ペルオキシド構造を酸化的に切断して2つのヒドロキシル基に分解する酵素である。
- ROOR′ + 電子供与体(2e−) +2H+⟶ROH +R′OH
という反応を触媒する。活性部位にヘムを補因子として含んでいたり、酸化還元活性を持つシステインやセレノシステインを持つことが多い。
基質特異性
過酸化水素を基質とするものが多いが、過酸化脂質など有機過酸化物に対する活性が強いものもある。
基質特異性は、酵素によって異なる。例えば 西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase, HRP)の場合、いろいろな有機化合物が電子供与体や受容体として働く。これは、活性部位が酵素の外から近づきやすい場所にあり、多くの物質が反応できるからである。一方、シトクロムcペルオキシダーゼ は、電子供与体としてシトクロムc を選択的に用いる。これは、活性部位が立体的に遮蔽された場所にあり、他の分子は十分に近づけないからである。なお、シトクロムcペルオキシダーゼは可溶性で精製しやすいので、シトクロムc酸化酵素のモデルとして研究されている。
生体内での役割
ミトコンドリアの電子伝達系では、スーパーオキシドアニオン(O2-)などの活性酸素種が常に発生している。活性酸素は生体分子を破壊し有害であるため、防御機構が存在する。スーパーオキシドアニオンは、まずスーパーオキシドディスムターゼ(SOD) によって過酸化水素に変換され、ペルオキシダーゼによって無害な水に分解される。
機構の詳細は分かっていないが、ペルオキシダーゼは植物の感染防御に関与している[2]。
グルタチオンペルオキシダーゼはセレノシステインを含む酵素である。グルタチオンを電子供与体として用い、過酸化水素だけでなく有機過酸化物にも作用し、酸化ストレスから生体を守っている。
ハロペルオキシダーゼも典型的なペルオキシダーゼである。この酵素は活性化ハロゲン種を生成し、その結果、有機化合物がハロゲン化される。
応用
西洋ワサビペルオキシダーゼは、組織学における染色(酵素抗体法)や、ELISAなどの分析化学実験において、標識物質として用いられている。上記のように基質特異性が広い西洋ワサビペルオキシダーゼを使って、テトラメチルベンジジンなどの色素前駆体を分解させ、分解物の着色を検出するのである。西洋ワサビペルオキシダーゼは分子量も小さいため、抗体に結合させて利用できる。
ペルオキシダーゼは、工業排水の処理に利用できる。例えば、重要な汚染物質であるフェノールは、西洋ワサビペルオキシダーゼによって多量体化して除去することができる。フェノールがフェノキシラジカルへ酸化され、これが多量体化するのである。多量体化したフェノールは単量体よりも毒性が低い。
ペルオキシダーゼを激しい反応条件や反応剤の代わりにすることもできる。接着剤・コンピューターのチップ・車の部品・ドラム缶や缶の内張りなどの生産過程で、ペルオキシダーゼを使用する研究も盛んである。
2024年11月30日 | カテゴリー:甲状腺, 内分泌疾患・ホルモン異常 |