自己免疫疾患における神経痛/AIカンファ
①
免疫性末梢神経障害とは,自己免疫性機序に
より,末梢神経の髄鞘あるいは軸索の障害を来
たす疾患群であり,近年,各疾患においてその
病態解明は大きく進展し,新規治療の時代に
入っている.代表的な免疫介在性神経障害とし
て,Guillain-Barré症 候 群(Guillain-Barré syndrome:GBS)と慢性炎症性脱髄性多発根ニュー
ロパチー(chronic inflammatory demyelinating
polyradiculoneuropathy:CIDP)が挙げられる.
GBSに対しては,経静脈的免疫グロブリン療法
(IVIG)及び血漿浄化療法の有効性が確立してい
るが,急性期に呼吸筋麻痺・完全四肢麻痺を呈
するような重症例では,軸索変性により重篤な
後遺症がみられる.同症候群の発症機序及び病
態の解明は,1990年代半ばから大きく進展し,
最終エフェクターが補体の最終産物である
C5b-9であることを受け,分子標的治療として
エクリズマブによる抗補体療法が注目されてい
る1).
Crow・深瀬(POEMS(P:polyneurop
athy/多発神経炎,O:organomegaly/臓器腫大,
E:endocrinopathy/内分泌障害,M:M-protein/
M蛋白,S:skin changes/皮膚症状))症候群は,
血清M蛋白を伴うために免疫介在性神経障害に
含まれていたが,正確には自己免疫性機序では
なく,形質細胞増殖に伴うサイトカインの過剰
産生が多臓器障害を惹起する重篤な全身性疾患
である.末梢神経障害の病態機序・発生機序は
未だ不明ではあるが,2000年代から形質細胞を
標的とした治療が導入され,予後は著明に改善
している2)
GBSは先行感染後に急性発症する炎症性多発
ニューロパチーであり,先行感染因子と末梢神
経の髄鞘あるいは軸索構成成分との分子相同性
による発症が推定されている1).現在,GBSは脱
髄型と軸索型の二大病型に分類されている.軸
索型GBS(急性運動軸索型ニューロパチー(acute
motor axonal neuropathy:AMAN))の標的分子
はガングリオシドGM1,GD1aであることが確立
し,これらに対する自己抗体が主病態をなして
いることが明らかになっている1).脱髄型GBS
(急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute
inflammatory demyelinating polyneuropathy:
AIDP))の標的分子は未だ明らかにされていな
いが,病理学的にはSchwann細胞膜に免疫グロ
ブリン・補体の沈着が示されていること1),軸
索型と同様に,免疫グロブリン療法及び血漿浄
化療法の治療効果が認められることから,恐ら
くは自己抗体を介して補体の活性化が起こって
いることが推定される
末梢神経疾患において 電位依存性Kチャンネル/VGKCに対する自己抗体は末梢神経の過剰亢進を起こし、ISACCS症候群、CRAMP-FSCICULATION症候群などの末梢神経過剰興奮症候群をきたす