地震伝搬
地震学で震源地から観測点までの振動の伝わり方の物理学的計算をくわしくおしえて
地震学において、震源から観測点までの振動(地震波)の伝わり方を物理的に理解するには、弾性波動論という理論を用います。
大きな流れとしては、「どのような媒体を(弾性体)」「どのような力で(運動方程式)」「どのように波として解くか」を計算していきます。
1. 基礎となる方程式:運動方程式
地震波は、固体(地球)の中を伝わる「弾性波」です。まず、ニュートンの第2法則()を連続体(固体)に適用した運動方程式から始まります。
: 媒体の密度
: 変位(揺れの大きさ)
: 応力テンソル(物体内部にかかる力)
: 外力(震源での破壊など)
2. 物質の性質:フックの法則
次に、応力(力)と歪み(変形)の関係を定義します。地球を「線形等方弾性体」と仮定すると、フックの法則により以下のように表せます。
: ラメの弾性定数( は剛性率)
: 歪みテンソル
これを運動方程式に代入することで、変位 に関する**ナビエの方程式(Navier's equation)**が導かれます。
3. P波とS波への分離
ナビエの方程式を解く際、ベクトル解析の「ヘルムホルツの微分定理」を用いて、変位ベクトル を「回転がない成分(スカラーポテンシャル )」と「体積変化がない成分(ベクトルポテンシャル )」に分解します。
これにより、2つの独立した波動方程式が得られます。
P波(縦波:Primary wave)
速度 は以下の通りです。
S波(横波:Secondary wave)
速度 は以下の通りです。
4. 観測点までの伝播:スネルの法則と走時曲線
震源から出た波が観測点に届くまでの経路を計算するには、地球内部の構造(層構造)を考慮する必要があります。
屈折と反射: 異なる密度の層を通る際、光と同じようにスネルの法則に従います。
ここで は**レイパラメータ(走時パラメータ)**と呼ばれ、波の経路を決定する重要な数値です。
走時計算: 震央距離 と到達時間 の関係は、以下の積分で計算されます。
5. 実際の観測波形(合成地震記象)
実際の計算では、震源のメカニズム(断層がどう動いたか)をグリーン関数という手法を用いて表現します。
合成地震記象の基本式:
: 震源特性(震源断層の動き)
: 伝播経路特性(地球内部の構造による変化)
: 観測計特性(地震計の性能)
これらの要素を畳み込み積分(コンボリューション)することで、理論上の地震波形を算出します。
まとめ
運動方程式で弾性体の中の動きを定義。
波動方程式を解いて、P波・S波の速度を決定。
スネルの法則で、層構造の中の経路を追跡。
グリーン関数を用いて、震源・経路・観測点すべてを統合。
もし、特定の計算プロセス(例えば「断層パラメータから地震モーメントを出す計算」や「表面波の分散関係」など)についてより詳しく知りたい場合は、さらに深掘りして解説できます。
2026年1月4日 | カテゴリー:物理数学統計諸計算 |




