糖尿病例//D12~D20
D12: そもそも糖尿病でない人は運動や、食活動の度にインスリンとグルカゴンを同時に分泌しています。これらの活動の度に糖の組織への再分配を行って、全身の臓器や組織にエネルギー燃料の分布に偏りがないように制御しているわけですが、糖尿病の患者さんはインスリン分泌がグルカゴンに比して減少しています。だらだらと冗長な食事をしたり、食事と食事の間に食活動をすると、グルカゴン分泌だけが起こって血糖が上がってしまいます。 つまり、カロリーに関わらず高血糖となってしまうので、間食は少量でもしてはいけません。
これが糖尿病の食事の大基本です。
D13: 今まで内服薬で何とかやってきましたが、注射薬がいよいよ必要で、ご自身のインスリン抵抗性の程度、内因性インスリン分泌の低さ、グルカゴンなどの血糖上昇ホルモンの多さより週一回のGLP-1+GIPの投与が期待できます。それに切り替えようと思います。
D14: GLP1には内服と注射があり、注射には毎日のタイプ、週に一回のタイプ、インスリンと混合して毎日打つタイプといろいろあります。GLP1の効能についてはいろいろ言われていますが、一番の効果は脳の偏桃体に働いて間食や冗長食が減ってグルカゴン分泌が低下することによると思います。糖尿病学会的にはインスリン分泌が回復すると考えているようです。もしそうだとすれば、6量体ではなく単量体のインスリンが出るようになってパラクライン的にα細胞からのグルカゴン分泌を抑制するからと考えています。ようするに食活動が変化しないのであれば打つ価値はないと考えます。
D15:ご自身の場合、内臓脂肪が多くTGも高く、PLTも多めですので、インスリン抵抗性がかなりのていど存在すると考えられますので、pioglidazoneの内服をまず始めます
D16:食事療法がしっかりされていて、メトホルミンで糖代謝を是正してもややA1cが高いのでGLP1製剤かイメグリミンを用いてβ細胞保護を行いながらSURを刺激して内因性のインスリンを出すような薬剤にします。
D17:残念ながらまずインスリンの4回うちをスタートします。A1cが安定化すれば3回うち、2回うちに減らせるかもしれません。針の先端によっていろいろな種類の針があります。自己血糖測定についてはこれから少しずつでも相談して決めましょう
D18:この高血糖の維持状態は糖毒性により自然炎症を活性化し臓器線維化や動脈硬化を進展させてしましますので、内因性のインスリンを刺激するか、外因性のインスリン投与を行うべき状態です。高血糖による動脈硬化を起こしています
D19:あまりにも高血糖の期間が長いのでいろいろな臓器の酵素が高血糖酸化ストレスによって変性し機能不全を起こすのが心配です。いよいよ、内因性のインスリンが枯渇して注射が必要なようです。GLP-1ももう使えません、3~4回うちは覚悟してください。これまでも、長きにおいて随分と説明してきました。
2025年1月12日 | カテゴリー:診療記録例 |