膠原病例
C1:CBCパターンから単球数が多く、リンパ球数が1400/μl以下でウイルス感染や細菌感染の兆候がないので、まず免疫異常があると言っていいと考えます。膠原病のやっかいなのところの一つに症状が類似しているために、いわゆる病名がすぐには確定しないことが多いことです。患者の方が自分の病気をよく知ろうとしてネットなどで検索しようとしてもなかなか難しいとおもいます。特異抗体がすぐに明確になれば、ある程度分かりやすいとは思いますが、多くの場合症状が出た後にしばらく経って陽性化するので焦りといら立ちを覚えるかもしれません。治療自体は病名が確定しなくても安全に始めますので安心してください。
C2:難病の申請は一定以上の重症度と特徴的な所見がそろわなければ受諾されません。申請が無駄骨に終わることが多いのでその都度相談をしなながら申請しましょう
C3:抗核抗体80x以上で皮疹が特徴的で皮膚筋炎やMCTD,強皮症とも区別がつくのでエリテマトーデスです。治療はVC,プレドニン、免疫抑制剤を用います。段階的に治療薬を用いて
いくつかの治療指標を用いて薬剤の増量、追加、減量をおこなっていきます。
C4:治りますかとよく質問されますが、実際のところは本当に治癒しているかはわかりません。当院では薬剤の中止をしても、あらゆる治療病態指標が1年以上陰性(寛解)になった例を治癒と考えていいとしています。これには医師、学者で意見の分かれるところと思います。
C5:レイノー症状があります。膠原病の治療でもっとも難渋する病態といってもいいかもしれません。一番有効なのは保温と加湿です。電子レンジタオルで一日2回しっかりとした保温を薦めています。抗凝固薬の内服や末梢神経保護薬が一般的に使われていますが効果は非常にスケプティカルです。
重症化すると末端壊死になる方もいらっしゃいます。ヘパリンの皮下注は非常にチャレンジングですが、いよいよの場合は用います。自己注射される例もあります。
ときにはEPAも用います。
C6:末梢血のリンパ球数が2200/μl以上です。膠原病では減少する例がほとんどですが、リンパ節、扁桃、パイエル板などがなんらかの刺激でリンパ球の増殖を行っているのではと推測されています。このことがすなわち臓器障害の前駆的病態ではないようです。様子観察します。
C7;膠原病に伴って腎機能障害があります。血尿、蛋白尿それぞれさらなる病態の存在を示しますので、治療薬の追加を行いことが多いので困惑しないようにお願いします。抗癌剤に分類されているような薬を積極的に使った方が透析を免れると判断できる時には強く勧めます。
C8:肺に線維化を認めます。山口宇部医療センターが専門病院なので、念のため意見を聞くために受診していただきます。
C9;いわゆるガイドラインに沿った診療を行っていますが、ガイドラインそのものが自由度が高いので、様々な医療機関で治療方針が異なることが多い分野です。セカンドオピニオンを聞きたい方は産業医科大学を薦めています。広島大学、岡山大学、小倉記念病院、国立岩国病院、下関済生会病院、なども選択肢ではないかと考えます。
C10:ベーチェト病と考えます。膠原病の中で好中球増多を認めるからです。関節リウマチの症状とは全く違います。
2025年1月7日 | カテゴリー:診療記録例 |